ケミカルハザード分析室
ダイオキシン類やPCBなどの残留性有機汚染物質(POPs)を分析するため、専用のケミカルハザード分析室を設けました。新たなケミカルハザード分析室についても、理化学分析室、水質分析室と同様に、廊下との境界を大型ガラスで仕切り、廊下からも室内が見渡せる空間を実現しています。
また、ケミカルハザード分析室は、以下の事項を満足させています。
■周辺環境に化学物質等による影響を及ぼさないこと。
・分析室の陰圧保持
・分析室内空気の適切な排気処理
・分析排水の適切な処理
■分析作業者が安全に仕事に取り組めること。
・ドラフトチャンバーでの作業スペース確保
■分析品質(正確さ、精度)の確保
・濃度レベルで区分した前処理室
・室間の汚染を防ぐ差圧コントロール
・分析フローを考慮した機器配置
・測定条件別に設定した複数の高分解能GC/MS
・GC/MS室は温度・湿度を連続でモニタリングし測定装置の安定稼動を確認
高濃度試料前処理室
低濃度試料前処理室
ダイオキシン類計量証明に必要となるMLAP認証について、令和6年秋頃の取得に向け取り組んでいます。
【分析作業の省力化と品質確保の両立】
〈前処理の自動化〉
ダイオキシン類測定での前処理は、試料からの抽出、精製(クリーンアップ)操作を行い、妨害となる物質を除去します。このうち、精製(クリーンアップ)操作では、多くの手間と時間を要しますが、当社では自動前処理装置を導入し、完全自動化、迅速化を図るとともに、人為的な誤差を低減させ、分析品質(正確さ、精度)を確保します。また、使用する溶媒量も少量になり、環境負荷の低減にもつながります。
〈JMS-800D UltraFOCUS™〉
当社で導入したJMS-800D UltraFOCUS™は、ダイオキシン類とその関連化合物であるPCBs, PBDEs, およびPOPs化合物などの超微量分析に最適なGC/MSです。
本装置は、感度と分解能の最適化が自動で行える機能を搭載しており、容易な操作で測定結果を得ることができます。また、フォーカス補正機能により、レンズパラメーターの調整を頻繁に行うことなく、さらに、自動ON/OFF機能付標準試料導入部により、オートサンプラーによる自動測定が終了した場合も、自動的にイオン源へのPFK導入が停止しますので夜間や休日での連続測定が可能になります。
廃棄物焼却施設のダイオキシン類測定・分析
【ダイオキシン類の主要発生源は廃棄物焼却施設】
ごみを燃やすと難分解性で有毒な残留性有機汚染物質(POPs)であるダイオキシン類が発生します。
ダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCB)をあわせた総称で、化合物により毒性が異なるため、最も毒性の強い化合物の毒性にそれぞれ換算して合計した毒性等量(TEQ)で評価します。
廃棄物焼却炉は、廃棄物を完全燃焼させるために800℃以上で焼却することが義務づけられています。このような高温で焼却すれば、ダイオキシン類も分解するからです。しかし、このような焼却で発生したガスについても、冷却する過程においてダイオキシン類が生成してしまうことが知られており、デノボ合成と呼ばれています。
ダイオキシン類に係る環境調査結果資料1によると、我が国における大気中のダイオキシン類平均濃度は平成9年度で0.55pg-TEQ/m3でしたが、令和3年度には0.015pg-TEQ/m3と大きく低下しています。
一方、ダイオキシン類の排出量の目録(ダイオキシン類排出インベントリー)資料2によれば、平成9年の1年間において大気中に排出されたダイオキシン類の量(TEQ)は7680~8135g-TEQ/年、廃棄物処理分野からは7205~7658g-TEQ/年が排出されていました。しかし、令和3年に大気中に排出された量は98~100g-TEQ/年、廃棄物処理分野からは52g-TEQ/年と排出量は大幅に削減されています。
ダイオキシン類の排出量の大幅削減は、国民や関係事業者の努力により対策に取り組んできた結果です。しかし、現在も排出量全体の52~53%が廃棄物処理分野から排出されており、主要なダイオキシン類発生源であることに変わりはありません。
廃棄物焼却施設に対しては、法令等に基づきダイオキシン類の排出規制等が実施されていますが、引き続き、環境中のダイオキシン類濃度の実態及びその推移を的確に把握することを通じて、対策の効果を確認する必要があります。
当社では、これまでにも廃棄物焼却施設に係る計画、設計、環境影響評価に取り組んでまいりました。今後も、廃棄物焼却施設のダイオキシン類測定・分析を通じて、良好な生活環境の保全に努めてまいります。
現地試料採取状況の写真は、当社が特定計量証明事業を行っていた平成22年当時のものです。
資料1:「令和3年度ダイオキシン類に係る環境調査結果」(令和5年3月環境省)
資料2:「ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)(令和5年3月環境省)
底質・土壌中のダイオキシン類測定・分析
【底質・土壌中ダイオキシン類は・・・?】
前頁では、大気中に排出されたダイオキシン類の量(TEQ)が大幅に削減されていることをお示ししました。同資料において令和3年に水中に排出されたダイオキシン類の量(TEQ)は1.2g-TEQ/年と推計されています。平成9年には12.8g-TEQ/年でしたので、水中への排出量も削減されています。
一方、ダイオキシン類に係る環境調査結果資料1によると、我が国における公共用水域底質のダイオキシン類平均濃度は平成10年度で8.3pg-TEQ/g、令和3年度で5.9pg-TEQ/g、土壌中の平均濃度は平成10年度で6.5pg-TEQ/g、令和3年度で3.4pg-TEQ/gと、底質、土壌中のダイオキシン類濃度は、大気中濃度ほど削減されていないことがわかります。底質、土壌は、大気ほど移流・拡散の効果がないことによるものです。
一方、令和3年度に人が一日に摂取したダイオキシン類の平均量は、体重1kg当たり約0.45pg-TEQと推定されています。また、このうち魚介類を主とする肉・卵、乳・乳製品などの食事からのダイオキシン類の一日摂取量は、平均0.44pg-TEQ/kg bw/日とされています。資料3
このように、我々が摂取しているダイオキシン類の大部分が食事経由であることを踏まえると、底質・土壌中のダイオキシン類濃度、推移を把握することは、引き続き重要であるといえます。
現地試料採取状況の写真は、当社が特定計量証明事業を行っていた平成24年当時のものです。
資料3:「令和5年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」(環境省)